薬用植物ひと口メモ

薬用植物とは
薬用植物の文化
生薬、民間薬、西洋医薬
新宿御苑の木本類、草本類、キノコ類の種数
薬の煎じ方など
『薬用植物ハンドブック』に収載されている植物
漢方薬と生薬
薬用植物の副作用
三冊併せ読み
有効成分はどこにある?
薬用植物の増やし方
ユキノシタ
地球の薬箱を救え
漢方薬とは?
漢方処方の名称について
最も多用されている生薬は?

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薬用植物とは
薬用植物は、薬として用いる植物の総称です。そのままであったり、簡単な加工をしたり、有効成分を抽出したりするなどして使います。薬草という言葉もしばしば用いられますが、薬用には草本類だけではなく木本類も使われるため、薬用植物という呼び方の方がふさわしいと思います。伝統的薬用植物は本来野生のものを採取して使っていましたが、その後栽培したものも使われるようになりました。
現在世界中の植物の約10%が薬用として使われています。日本には少なくとも3万5000種の植物(キノコなどを含む)がありますから、同じ比率で考えると3500種を超える薬用植物があることになります。残りの植物についてもまだ利用方法がわかっていないだけで、調べが進めば薬用植物はさらに増える可能性があります。
日本でよく使われる薬用植物は250種類ほどです。薬用植物の採取方法、乾燥・保存方法、服用方法、薬用酒の造り方などは成書を参考にしてください。
※自然環境保全基礎調査・植物目録ほかによる

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薬用植物の文化
現在世界各地で使われている薬用植物は、中国伝統の中薬、中国から日本へ伝わった漢方薬、日本の民間薬、ヨーロッパのハーブやスパイス、インド伝統の薬用植物、東南アジアの薬用植物、アメリカ大陸の薬用植物などがあります。これら世界各地の伝統薬用植物が今日でも現行の医薬として現地の人々の健康を支えています。伝統医学で薬用植物は多用され、世界中の人々の健康の維持や向上、病気の予防や治療のために寄与しているのです。
薬用植物の活用法について、近年西洋医学的見地からさまざまな実証が行われています。現在では、薬用植物の有効性が西洋医学的に裏付けされることになり、薬用植物が持つ有効性を西洋医学で活用する場面も多くなってきています。

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生薬、民間薬、西洋医薬
生薬は、自然界に存在する薬効のある物質から有効成分を精製することなく体質の改善を目的として用いる薬の総称です(植物とは限りません)。漢方薬もその起源は生薬ですが、数千年の歴史を持つ漢方医学の理論に基づいて処方されるもので、一般に複数の生薬を組み合わせて用います(芍薬甘草湯2種、小柴胡湯7種、八味地黄丸8種、補中益気湯10種などです)。
民間薬は、医療の専門家ではない日本庶民の間に伝承されてきた薬のことで、その多くが植物起源の生薬です。
西洋医薬は、病気の原因を探るさまざまな検査の結果に基づき、病名を決めて薬を選びます。同じ検査結果、同じ病名のときは、化学的に合成された同じ薬が使われます。

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新宿御苑の木本類、草本類、キノコ類の種数
苑内 木本類 約250種(平成20年調査結果による)※1
草本類 約260種(平成20年調査結果による)※1
キノコ類約130種(平成17から27年までの調査結果による)※2
大温室内 約500種(品種含む:内、高木約100種、低木・地被約400種)※3
※1 新宿御苑管理事務所よりデータをご提供いただきました
※2 大館一夫様のデータを永野様よりご提供いただきました
※3 環境省HP新宿御苑大温室開館時(平成24年)の報道発表による

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薬の煎じ方など
煎剤 生薬を水で煎じたもの
製剤総則には、生薬に精製水950mlを加え、数回かき混ぜながら30分間加熱し、温時、布ごしするとあります
浸剤 生薬を水に浸して抽出したもの
製剤総則には、生薬に精製水50mlを加え、約15分間潤した後、熱精製水900ml を注ぎ、数回かき混ぜながら5分間加熱し、冷後、布ごしするとあります
茶剤 数種の生薬を水で煎じたもの(熱湯に浸出して服用する)
薬酒 薬用とされる酒、生薬を入れた酒、薬用酒
振り出し 生薬を布の袋に入れたまま湯に浸し、振り動かして、その薬気をだす
散剤 こなぐすり、散薬
粉末 細かな粉状のもの
湿布剤 布を薬液に浸して患部にあてて固定する
浴剤 生薬を湯浴に加えたもの

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『薬用植物ハンドブック』に収載されている植物
この『薬用植物ハンドブック』に収載されている植物は411種です
その内訳は次のようになっています
あ行89種、か行87種、さ行51種、た行45種、な行28種、は行53種、ま行27種、や行23種、ら行 7種、わ行 1種
意識して選んだわけではありませんが、五十音の前半が圧倒的に多い結果となりました
これらのうち、新宿御苑にあるのは、何種類でしょうか?

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漢方薬と生薬
「漢方薬」と「生薬」はどうちがうのでしょうか。よく混同されて使われています。実はまったく別のものです。漢方薬は生薬で構成された薬のことです。生薬は漢方薬の構成成分ということになります。
ひとつの漢方薬には数種類の生薬が使われています(例外として、一種類の生薬がそのまま漢方薬として使われているものもあります)。例えば風邪のひきはじめに絶大な効果を示す「葛根湯(かっこんとう)」は、甘草(p17)、葛根(p19)、芍薬(p23)、生姜(p24)、大棗(p30)、桂枝(p30)、麻黄(p38)の7種類の生薬で構成されています。これらの生薬を独自の配分で混ぜ合わせて作られており、それが優れた効果を発揮しているのです。漢方薬は、生薬をやたらに組み合わせたものではなく、それぞれの生薬の分量や比率に理論的なものがあります。そこへ歴史と経験が加味され、効果的で安全な薬として確立されてきたものです。
生薬成分が含まれていれば何でも「漢方薬」と呼ぶのは、かなり乱暴な話です。

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薬用植物の副作用
薬用植物は副作用があるのでしょうか。
副作用というと悪いイメージがあります。でも・・、風邪をひいて熱があるので解熱剤を飲んだら熱は下がり、ものすごく記憶力がよくなった、とします。このとき飲んだ解熱剤の予期していた効果は「解熱(熱を下げる)」です。ところが、予期していなかった効果「記憶力がよくなった」は、副作用にあたるのです。薬学では、予期した効果以外の効果をすべて副作用と呼んでいます(良し悪しに関係なく)。たいていの場合、副作用は悪い効果が多いようです。
こんな例もあります。解熱・鎮痛剤として有名なアスピリン。最近ではその副作用であった血液凝固抑制作用、動脈硬化進行抑制作用の方が重視され、狭心症や心筋梗塞などの治療に利用されるようになりました。
さて、薬用植物ですが、天然ものだから副作用は少ない、と簡単に考えがちです。しかし、薬用植物も正しく使わなければ、効くどころか症状を重くすることがあります。服用のやり方を誤れば命を落とすことにもなりかねません。量を誤ったり、「外用」を「内服」するなどです。「薬」と「毒」は紙一重と心得るべきです。
『薬用植物ハンドブック』では、注意すべき有毒な植物には「有毒」と書き込んでおきました。

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三冊併せ読み



以前にお見せした二種類の冊子(上図)と併せてお読みになると、さらに内容が濃くなると思います。この『薬用植物ハンドブック』と併せ、これら三冊子には、内容が共通した部分があります。
同じ植物でも、目線を変えて観ると(切り口を変えて観ると)、こんなふうに観ることができるという見本になります。
お客さまをご案内するとき、お話しにぐんと厚みが増すこと請け合いです。

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有効成分はどこにある?
薬用植物の有効成分は植物のどこに蓄えられているのでしょうか。

上図は植物細胞の模式図です。各細胞内小器官の名称を記しました。動物細胞との違いは、植物細胞には細胞壁、葉緑体、液胞があることです。液胞は、細胞内で不要になった、いわば老廃物を貯めておく器官です。植物は、生体内で不要になったものを体外へ排泄するシステムを持っていません。不要になったものは、すべて液胞内へ蓄えられます。そのため、植物細胞は成長とともに大きくなります。木はどんどん大きくなりますね(動物の場合は、生体内で不要になったものを体外へ排泄する機能があります。だから、ある一定の大きさになると成長が止まります)。植物細胞がどんどん大きくなるわけは、下図のように細胞内の液胞が大きくなるからです。液胞内には成長に伴って蓄えられた老廃物・・、のはずが、実は植物にとって重要な物質も蓄えられていることが近年分かってきました。そのなかに薬として有効な成分も含まれているというわけです。

細胞の加齢とともに容積が大きくなる液胞(上図)の中は、細胞液と呼ばれる透明な液体で満たされています。その液体があるからこそ、細胞は細胞壁の緊張状態を保つ(細胞の大きさと形を保つ)ことができるのです。
※動・植物細胞の構造などについてさらに詳しくお知りになりたい方は、管理者までお問い合わせください

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薬用植物の増やし方
薬用植物を増やすにはどうしたらよいでしょうか。
先ず思いつくのは種子を採ってまくという方法。しかし、種子繁殖は植物体の品質にばらつきを生じることが多いといわれています。このことが、優良な形質をもった個体が得られたとき、その形質をもった個体を多量に確保することを困難にしています。従来は、株分け、挿し芽などの方法が取られてきましたが、こうした方法では、年間にせいぜい10倍程度にしか増やすことができません。
近年バイオテクノロジーの技術で確立された「茎頂培養法」についてご紹介しましょう。一度に大量の苗を作ることができるこの方法により、4ヶ月で1本の優秀なブドウの木から12000本のブドウの苗を、8ヶ月で1本のリンゴの木から6万本の苗が生産された例も知られています。ここで使われている手技は「無菌操作」と「植物細胞培養」です。場所と器具類さえあれば誰にでもできる簡単なものです。バイオテクノロジーの技術を駆使して育てられた薬用植物の利用も身近なものになってきています。
ここでご紹介するのは、ランの茎頂培養技術(メリクローン法)です。繰り返しになりますが、この方法の利点は、オリジナルとまったく同一の性質をもつ株を大量に得られることです。加えて、多くの植物の場合茎頂(生長点)にはウイルスが存在しないので、ウイルスフリー株を大量に得ることができる点です。

@ 殺菌・消毒してから、頂芽あるいは側芽を切り取ります
A 組織片に分割します(消毒したカミソリで切ります)
B 組織片を培養液の中で培養します(球形に肥大してきます)
C 根と茎が生えるように調整した培地上で培養します
D 個体が伸長します
E 鉢に移して圃場で栽培します
※バイオテクノロジー技術についてさらに詳しくお知りになりたい方は、管理者までお問い合わせください

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ユキノシタ
薬用植物を育ててみませんか。
お勧めはユキノシタ。ユキノシタは、じめじめしたところで育つ薬草で、手入れが簡単で、ランナーをのばしてどんどん増えてくれます。それなのに、これほどの効能を持つものは珍しいと思います。ご自宅で栽培することをお勧めします。
民間薬として使うときは、草の根の上から切り取り、室内で日陰干しをして乾燥させます。ほかに、葉の絞り汁を耳垂れ、中耳炎、漆によるかぶれ、虫刺されなどの特効薬として使うこともあります。
ユキノシタはその薬効だけではなく、葉は山菜として、天ぷらなどにしておいしく食べられます。葉の裏面だけにうすく衣をつけ、揚げたものを「白雪揚げ」と呼び、これまた美味です。

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地球の薬箱を救え

さまざまな薬、食糧、また香料の原料として、私たちが利用し、恩恵を受けている薬用植物は、野生から採取された植物に大きく依存しています。今、それらの植物が商用目当てに過剰に採集されるようになり、世界各地の原産地の生物多様性に大きな問題を引き起こしていることは、あまり知られていません。世界の植物の多様性を維持しながら、薬用植物の恩恵を持続可能な形で私たちが受け続けるためにはどうすればよいのでしょうか。
2010年、愛知県で開催された生物多様性条約締約国会議(Cop10)の関連イベントとして「地球の薬箱を救え。」が開かれました。ここで取り上げられたテーマは「薬の原料になる植物の多くが絶滅の危機にさらされている」という現実。世界で薬用として用いられている植物は5〜7万種に及びます。そのうち約20%が存続の危機にあります。日本の薬用(アロマも含む)植物の輸入金額は世界4位。約90%を輸入に頼っているといわれています。西洋医学の恩恵が届かない未開の地域に住む原住民の悩みは深刻です。現地の人々は先人たちの知恵から、植物を採取する適切な時期や方法を学んでいます。そこへ商用のための採取に入る無知な外国人(日本人を含む)は根こそぎ採って根絶させてしまったり、採取時期を誤って種子を痛めたりしています。医薬品の成分を含む植物の乱獲による絶滅の危機を何とかしたいものです。
この『薬用植物ハンドブック』も、絶滅危惧植物につき掲載をためらったものがいくつかあります。

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漢方薬とは?
漢方薬は、漢方医学理論に基づいてさまざまな生薬を混合して処方する薬です。数種類の生薬を混ぜ合わせて使われるもので、混ぜる生薬の種類、それらの分量、煎じ方、服用の時期や方法に法則や制限があります。
一般に、何種類かの生薬により構成されているものを漢方薬と呼び、生薬を単独で用いても漢方薬とは呼びません。何種類かの生薬を決められた比率で決められた方法で煎じて、飲んで、はじめて漢方薬と呼ぶことができます。例えば、生薬の?苡仁(ヨクイニン)だけを煎じて飲んでも、これは単にハトムギ茶を飲んだということになります。
漢方治療は、その患者さんの状態に合わせ、心身のバランスを立て直し、病気を改善しようとします。そのため、同じ病名でも、患者さんにより、異なる漢方薬が処方される場合もあります。つまり、病気に対してではなく、患者さんに対して投薬するのが漢方の治療方針といえます。
緊急性の高い症状であれば、構成生薬数が少ない方剤を用い、慢性症状や体質改善には、構成生薬数が多い方剤を用いることが多くなります。これはあくまでも傾向であって、一人一人に合った漢方薬を使用するのが常です。含まれている生薬の種類が多ければ治療効果としてよいというわけではなく、そのときどきに応じた漢方薬を使用することになります。

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漢方処方の名称について
漢方処方の名称について、ここを抑えておけばバッチリです。
〜湯本来は煎じた液を温かいうちに服用するもの
例:葛根湯、十味敗毒湯、麻黄湯、補中益気湯、六君子湯
〜散本来は生薬を粉末にしてそのまま服用するもの
例:安中散、五苓散、当帰芍薬散、加味逍遙散、防風通聖散
〜丸丸薬の意味で、粉末状にした生薬に蜂蜜などを加えて丸く固めたものを服用するもの(ただし現代のエキス剤などの場合はこの限りではない)
例:八味地黄丸、桂枝茯苓丸、六味丸、麻子仁丸、牛車腎気丸
〜飲 例:温清飲、参蘇飲、茯苓飲、清心蓮子飲、連珠飲
〜膏軟膏(塗り薬)のこと
例:紫雲膏、中黄膏、神仙太乙膏
その他 例:治打撲一方、当帰飲子、痛瀉要方、玉女煎、雷氏清凉滌暑方、黒?丹

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最も多用されている生薬は?
『薬用植物ハンドブック』に収載された処方の中で最も多用されている生薬は何だと思いますか。
最も使われている生薬は甘草(カンゾウ)で、医療用漢方薬の75%の構成成分です。
続いて生姜(ショウキョウ)40%、茯苓(ブクリョウ)39%、芍薬(シャクヤク)37%と続きます。当帰(トウキ)、人参(ニンジン)、桂皮(ケイヒ)、大棗(タイソウ)、蒼朮(ソウジュツ)、半夏(ハンゲ)、柴胡(サイコ)などもよく使われています。
一方、ひとつの処方にしか使われていない生薬も20以上あります。
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